不動産コラム

不動産売買について

2022.06.08

購入者の注意点

不動産を購入される多くの方の目的が、建物利用を前提としています。

不動産の売買で購入者が特に注意しなければならないのは、購入する土地が『宅地となり得るのか』という点です。

宅地とは建物(住宅、店舗、工場等)の敷地を言います。

土地は建物の建築行為ができる場合に宅地としての価値を発現するもので、建築行為ができない土地は宅地としての価値は無く、その価値は農地や林地の価値に近いものとなってしまいます。

具体的な例として市街化調整区域で土地を購入したことを想定します。市街化調整区域は原則として建物の建築行為ができない地域です。それを知らずに建物の建築行為を前提に土地を購入したとしても、法律を知らなかったから、との理由では保護されませんので、当該売買契約は有効であり、建築行為ができないことを理由に取り消すことができないというのが一般的な解になります(ただし、錯誤などの事情を立証できれば無効を主張できる余地があります)。

土地の利用には様々な法律の規制があり、所有者による勝手な利用は原則として許されていません。建築行為も同様で、建物の建築行為そのものが制限される地域があり、建築行為が制限されていない地域でも、法律が規定する要件を具備していないため建築行為ができない土地もあります。

土地の利用に制限をかける理由は、不動産は公共財的性格も持つ財産ですので、所有者による好き勝手な利用を許すと、そのまちが進めるまちづくりを阻害し、計画的なまちづくりの障害となり、また消防活動等の安全上の問題を解決するためです。

宅地建物取引業法は、取り引きの安全などを図る目的で、昭和27年に施行されましたが、宅地建物取引業者に義務として課されている重要事項説明は、その土地が購入者が目的通りの利用ができることの説明、すなわち取引の対象である土地が合法的に宅地となり得るという説明がその主眼になります。

以上は既に建物が建築されている土地も同じで、再建築ができない土地もありますのでご注意ください。

日本には宅地として利用できない土地はたくさんあります。購入しようとする土地が目的通りの建物が建築できるという調査は必須の事項です。しかし、個人で不動産の調査を行うことはほぼ不可能ですので、不動産業者を通さず個人間で不動産の取引を行う場合は、売買契約書の特約で「建物の建築行為が不能であることが判明した場合、買主は当該売買契約を取り消すことができる」旨の一文を入れておくと安心です。

不動産の個別的要因

2021.06.25

土地の面積と価格の関係

相続制路線価で見ていただいた通り、土地は大きすぎても、小さすぎても、相場並みでは売れないと考えられています
ここでは面積と土地単価の関係についてご説明したいと思います。処分されたり購入されたりする際の参考にしてください。




地積過小

理論的に、土地の面積は広ければ広いほど良いものと考えられます。(固定資産税が高くなるとか、庭の手入れが大変とか、管理が困難になることはここでは考慮しません。)土地面積をこのように考えると、土地面積と効用(難しい言葉ですが、「満足」のような表現とお考えください)との関係を図で示すと上図の①線のようになると考えられます。
①線を見ていただくと、0㎡の時の効用0から始まり、面積が小さいうちは効用の増え方は逓増していますが、面積が大きくなるに従い効用の増え方は逓減しています。これは、100㎡と120㎡を比べると100㎡だったら車置き場がなかったが、20㎡増えることで車が置けるようになるのであれば、その増えた20㎡には大きな価値があります。しかし、10,000㎡と10,020㎡を比べると、効用自体は10,000㎡より10,020㎡の方が高いのですが、20㎡増えてもあまりありがたくはありませんので、同じ20㎡であっても、効用の増え方は100㎡と120㎡との間の増え方よりは小さくなるものと考えられるからです。

地積過大

土地の総額は面積×単価で計算されますので、単価が一定であるとすると、面積が大きくなればなる程、総額が高くなり購入可能な人が少なくなっていきます。これを図で示したものが②線となります。ある面積(A)までは総額が一般消費者が買える水準であるため、不効用(満足の逆)が生じませんが、ある面積(A)を超えると不効用が生じはじめます。面積(A)までは、100人の需要者全員が買える水準と仮定すると、面積(B)で10人が脱落し、需要者が90人になるとします。面積が増えれば増えるほど、購入可能者が減っていき、やがて買える人がいない面積(C)に辿り着きます。個人消費者には大きな所得の開きがなく、買える金額には限度があり、その限界には個人差があまりないため、面積が増えるに従い不効用の増え方は逓増してくものと考えられます。(市場参加者につき、不動産の評価の中では極端なお金持ちは考慮しません。そういう人はごく稀にしか存在せず、結果そういう人の行動は市場には影響を与えないと考えるからです)

土地面積と効用

上図の①線と②線をY軸(効用)に対して合計すると、③線が求められます。③線が土地面積と効用の関係を示すものです。
面積Aより小さい面積は効用が低い水準です。これが地積過小と言われる土地の減価要因で、土地面積が小さいと建物のレイアウトが制約を受け、希望する建物が建ちにくくなり、更に民法上の離隔距離等を考えると、建築基準法で許されている建ぺい率(土地に対する建築面積の割合)を消化できないことも考えられますので、十分に宅地としての機能を発揮することができません。そのため、相場より土地単価を下げないと売れない場合が多いものです。しかし面積が小さいということは総額が低いということですので、値引きされることなく、相場と同じ単価で取引されることがあるのも、面積が小さい土地の特徴です。鑑定評価理論では、その場合の取引は買い進み(買主の情報不足)による取引と考えます。
面積A~面積Bまでの面積が効用は最も高く、相場並みの単価で処分できる最も財産価値の高い面積となります。
面積B~面積Cも効用は低い水準です。これが地積過大と言われる土地の減価要因で、土地面積が大きくなれば総額が嵩み、更に管理等が困難になってくるという不効用も伴います。しかし、マンション素地としての需要がある地域ならば、地積過大は生じません。マンション素地となるのであれば、マンション分譲業者という個人需要者を遥かに上回る規模の買い手が現れるため、総額という不効用がなくなるためです。
面積Cを超えると効用が負になり、買い手が現れず、取引が成立しないことを意味します。

土地面積と不動産価格

最後に土地面積と土地単価との関係は、今まで見てきた土地面積と効用の関係を、土地面積と土地単価の関係にそのまま置き換えて考えていただければ結構です。すなわち、土地面積は小さければ小さいほど土地単価が安く、土地面積が大きければ大きいほど土地単価は安くなります。では、どれくらいの面積が最も好ましい面積であるかということが気になりますが、私見としましては、それは「総額としての市場性」により決まってくるものと考えます。
そのまちで土地を探す人の最も多い層(たとえば1,000万円)を基準として、そのまちの宅地相場が坪20万円なら、50坪が好ましい面積ということになります。総額としての市場性は都市によって異なり、また同じ都市であっても地域によって異なりますので、好ましい土地面積は都市及び地域によって異なるものと考えられます。現実の利用の面からは70坪が今の社会に適応した、最も好ましい面積だと思います。70坪は車が2台置けて、小さな庭も持てる面積です。以上より考えると、私の住んでいる北九州市は、X軸上の点Aが50坪、点Bが80坪といったところでしょうか。